034:シーソー。

















あまりに晴れ渡った空が、眩しくて。

「ドライブに行きましょう!幸人さん!」

きらきらと、目を輝かせるアスカに

「・・・たまには、いいかもな。」

そう言って、愛車にキーをまわした

ある日の午後。

行き先は決めずに、車を走らせれば。

「おや、ここは。」







いつだったか、戦って。

いつだったか、儀式の真似事をした

教会が、現れて。

「寄ってみるか。」

幸人は器用にハンドルを回した。
















「何だか、こう…ここへ何度も来ると、運命みたいなものを感じます。」

忘れもしない。

丁度、半年前。

こうしてアスカの隣に立って

磔にされたキリストの前

愛を誓い合った。

確かに、それは酷く幸せで。

何もかも、もう要らないと思えた程だった。









それでも、時折懐かしむように触るロケットや

行き違った愛に苦渋した末に、ジャンヌと名を変えて。

敵対する事となった

かつての恋人を見つめるアスカの

居た堪れないと訴える表情を

目を伏せたいのに、見てしまって。










耐えられないほど胸を痛めたのは

もう数えられない位。










無意識で、する事を。

攻め立てられるほど、非情な人間ではない。












いつまで、許される関係なのだろうか。

愛しいと、アスカを想う気持ちと。

アスカには、護るべき人が居る。

押しつぶされそうな切なさと罪悪感。

ぐらぐらと揺れる幸人の気持ちは

まるでシーソー。







「ここで、愛を誓うんですよね。」

そう言ったアスカを、見上げれば。

首に絡まるロケットを

シャツの上から、握り締めていて。

「・・・っ」

見ないように、幸人は俯いた。










無意識でするからこそ。

アスカの奥底で訴え続ける

アスカ自身も気付けていない

紛れのない本心なのだろう。










幸人の心の中で、今。

自分が離れるべきなのだと、確信して。











「アスカ。」

以前に、そうしたように

十字架の前、向き合って。

いつの時も、決して外さなかった銀色のブレス

シャラ、と。

緩やかに解いて

「これは、お前に返す。」

「え・・・」

なぜ、と強張るアスカの掌に

静かに握らせる。

「この方が、お前の為だ。」

どうして?

アスカの口が、声も無くそう動く。

答えることをせず

幸人はアスカに背を向けた。















「どうしてですか、幸人さん!」

歩き出した背中に

叫ばれた、声。



振り向く、戻る、揺るぐ気持ちはもう無くて。



「店に戻るぞ。交代の時間だ。」

何も無かったように

いつもの生活を、引き戻して。

「どうした?アスカ。」

振り返って

立ち尽くしたままのアスカに向けるのは

色恋を、消し去った微笑。








「・・・っ」

愕然と、目を見張って。

強張る視線のまま、項垂れて。

「・・・ハ・・・イ。」

掠れた声で、アスカは肯く。

「早く帰らないと、らんる達にどやされるぞ。」

重く歩き出したアスカに

幸人はそう笑って。











―――これが、正しいんだ。

皮肉にも、同じ場所で。

揺れていた幸人のココロは

ダイノアースを護るべきだと傾いたきり。

あれ程ぐらついていたのが嘘のように

動かなくなった。






























戻る。

半年後の、二人。




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