「くんはわいのもんですうー。あんさんは向こういっとき!」 なんだか暑くるしい物体(声からして小春)が俺に後ろから抱きついた。「わいのもんですうー」はめちゃくちゃ明るい声なのに対して、「向こういっとき!」はやたら強気だ。目の端で小春の手がハエを追いやるようにシッシッと動く。目の前にいる千歳が苦笑いするように肩をすくませた。 「……ほー。そうだったんか」 ぽりぽりと千歳は頭を掻きながら俺と小春を交互に見てうなずいた。え、まてまて。それおかしくね? ここはお前、小春を俺から引き剥がすとか俺を救出するとか、「は俺のもんやけん、手え出すんやめえ」とか言うべきだろ。まるで「おめでとさん」と今にも言い出しそうな千歳に冷や冷やした。 「で、お2人さんはどこまでいったと? 聞きたかー」 にっこにこしながらなんかコイツ言ってますけど。アホか。俺は千歳としか……千歳としか……ごにょごにょしてないぞ! 「そりゃもー、あんなトコまでいきましたなあくん」 ぼそりと耳元で呟くようにいっやらしく息を多めに吐きながら発音するけど、小春だと思うと感じるとか以前の問題で鳥肌が立つ。 あんなトコってどこ! この大嘘つきめ! 「あんなトコて?」 俺もちょう聞きたい。 千歳は身を猫背気味に乗り出した。 「ねずみーランドや!」 ……は? あ、いや行った覚えあるけど、あるけどね。まだ千歳が転校してくる前に、テニス部みんなで行ったんだよな。テニス部みんなで。テニス部みんなでな。 「羨ましいでっしゃろ!」 小春はへへん、と勝ち誇ったように得意げな顔をして、俺をいっそうぎゅっと抱きしめた。後ろから抱きしめられてるのになんで顔が分かるかって? 簡単に想像できるからだよ!わっかりやす! 「だー! くっそ暑いッってのー! いー加減はなれろー」 もう付き合ってられるかと思って振り払うように肘で小春のわき腹をつつく。けど反対に小春は「さん……」って語尾にハートマークがつきそうなきっもち悪い声を出して擦り寄ってきた。鳥肌が出すぎている。もういっそのこと鳥になってしまいたい。羽ばたきたい。逃げ出したい。 「羨ましかー。ばってん、俺らは最後までやっとうよ、ねえちゃん」 ひょい、と、身軽そうに。 千歳は俺を、小春から引き剥がして抱きしめた。あー!わいのくん!と急に涼しくなった背中の後方で声がした。 固まった俺に千歳は「ね?」と首をナナメに傾けて聞く。反則。ちょっとかっこいいじゃんか。 「や、まあ、うん……そーだねえ」 ははは、と苦笑いしながら言うと、千歳の大きな手が俺の頭をわしわしと撫でた。 千歳の手は大きい。大きくて、強い。 だから頭がぐらぐらして、もう何も考えられなくなった。 2006.7.26 アリさんリク千歳夢です。小春がでばってます。 小春ってだれ?なコミックス派の方、29巻31ページの 1番左、坊主の目がねで肩組んでる子です。 すっっごく楽しかったです。 ちなみに小春は全て計算済みのうえのボケだと思う。 リクエストありがとうございました! |